皆さん、こんにちは!プジェクトマネジャー、プロダクトマネジャーは聞いたことがあっても、プログラムマネジャーは聞きなれない方が多いのではないかと思います。
プログラムマネジャーは、複数のプロジェクトを統合的に管理し、全体感を持って企業の戦略目標達成に貢献します。時には新たな取り組みやイノベーションを促進します。彼らは、プロジェクト間の協力や知識共有を通じて、企業全体の競争力を向上させる役割を担い、プロジェクト間のリソースの最適な配分や相互依存関係の調整が可能になり、企業全体の効率が向上します。プログラムマネジャーはビジネスの成長に貢献し、ビジネス力を磨くことができる重要なポジションです。しかしながら、日本ではまだ浸透しておらず、外資系企業や一部のスタートアップ企業でしか耳にすることはありません。そこで、今回の記事では、実際に外資系IT企業でシニアプログラムマネジャーとして勤めている経験に基づいて、プログラムマネジャーという職種について解説していきたいと思います。
Contents
プログラムマネジャーの役割
プログラムは継続的に目的を達成するための仕組みや取組です。プログラムマネジャーは、プログラムに対して責任を持ち、企画、推進を管理する役割を担っています。プログラムの効果的な運営によって、ビジネスの成長をサポートします。一つのプログラムは組織横断の協力が必要で、それらを束ねて目的に向かっていきます。負っている推進対象が、プログラムなのか、プロダクトなのかがわかりやすいプロダクトマネジャーとの違いです。
プログラムマネジャーが所属するチームをあえて日系企業で例えると、部より機動性を持つ「~推進室」に所属するリーダーポジションとも言えます。
https://asana.com/ja/resources/program-manager-vs-project-manager
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複数のプロジェクトを管理
プログラムをはやりに例えると、「全社DX浸透プログラム」といったものです。プロジェクトは期間限定で、限定的な目的をもっていますが、プログラムはより継続的で、横断的な機能を持っています。プログラムを実施するためには、複数の期間限定のプロジェクトが含まれます。プログラムマネジャーは、これらのプロジェクトの管理にも責任を持ち、プロジェクトマネジャーと連携してプロジェクトの進捗や成果を監視し、適切なサポートを提供します。
ステークホルダーとの交渉
プログラムマネジャーは、多くのステークホルダーと関わりながら物事を前に進める必要があります。主体性を持ち、客観的事実と情熱を双方をもってステークホルダーと交渉したり、説得する力が求められます。そのためコミュニケーション能力やリーダーシップが大切になってきます。プログラムと関わるステークホルダー毎に複雑な利害関係が絡み合うため、組織力学(組織ごとの役割、後ろ盾、会社に対する貢献、本社との関係性、組織の課題等)に対する優れたバランス感覚も大事になってきます。
粘り強く障害に対処し乗り越える
目的達成に向けた障害が出た際には、方針転換や後退以上に、いかに障害を取り除き前進できるかがプログラムマネジャーで求められることもあります。なぜなら、横断的なプログラムであればあるほど、制約条件が多く、抵抗勢力も強く一筋縄ではいかない事がほとんどだからです。物事を一歩引いて俯瞰してとらえることによって、相対する命題と反対命題を超越する問題解決能力や柔軟性、そして簡単にあきらめない粘り強さが重要です。
プログラムマネジャーは難易度が高い職種ですが、それだけにやりがいも大きく、ビジネスに直接貢献できる立場です。このポジションでは、さまざまなスキルが鍛えられるため、ビジネス力を大幅に向上させることができます。
プログラムマネジャーに求められる力
ビジネス戦略と目標設定力
プログラムマネジャーは、ビジネス戦略と目標設定にも関与します。組織のビジョンや戦略に基づいて、プログラムの目標を設定し、それを達成するための戦術やアクションプランを立案することが求められます。ビジネスではより良い選択肢はあるかもしれませんが、正解はなく常に不確かな状況下で提案や意思決定を迫られます。このような環境の中でも、仮説を持って計画を立てて物事を試行錯誤していく行動力が重要です。
ドメイン知識と分析能力
リーダーシップをもって物事を前に進めるためには、対峙する課題や負っている関連業界・事業や業務に関する深いドメイン知識が求められます。そしてこれらの知識を用いて、定量的な事業計画作成や実績評価のための分析能力やそのためのExcelといったツールのスキルも大切になります。
チームビルディングと人材育成
プログラムマネジャーは、チームのメンバーや他部署と連携して仕事を進めることが多いため、チームビルディングや人材育成の能力も重要です。チーム内のコミュニケーションや協力を促進し、メンバーの能力を最大限に引き出すことで、プロジェクトやプログラム全体の成功に繋げることができます。余裕があるときには1on1やランチを一緒してお互いの近況を共有したり、相手が困ったときに助けて恩を売っておくようなことも必要かもしれません。ただ単に、組織の役割だけでなくステークホルダーの性格や癖も踏まえたこまやかのコミュニケーションができると理想的でしょう。
リスクマネジメント
プログラムマネジャーは、プロジェクトやプログラム全体のリスクを評価し、適切な対策を立てることが求められます。リスクマネジメントのスキルを磨くことで、想定外の問題にも迅速かつ適切に対応し、目標達成に向けた安定した推進力を確保することができます。リスクに対する感度を高めるためには、何事も深堀をする癖をつけ、隠れた前提や見落とされがちな細かい点もしっかり把握した上で、事柄同士の関連性・一貫性に気を配る必要があります。得意でない場合は、リスク感度が高いメンバーの協力を得る必要もあるでしょう。
タイムマネジメントと優先順位付け
プログラムマネジャーは、限られた時間の中で効果的に仕事を進めるために、タイムマネジメントと優先順位付けのスキルが不可欠です。プロジェクトの進捗状況を把握し、リソースを最適に配分しながら、全体の目標達成に導く力が求められます。さらに、やらなくてよい仕事と人に依頼すべきことの選別が必要で、うまくステークホルダーに協力してもらうことで自分のリソースをより重要な仕事に注力させることが必要です。
根性でやり切る力、そして鈍感力
実は前述の能力や経験があったうえで、一番大事なのは根性で最後までやり切る。最初は皆が反対しても信じて周りを巻き込みながら、突き進む力です。そのためには、失敗したときや反対されたときでも気にせずにやるべきことにフォーカスする必要があります。これは精神力・メンタルを鍛えるという考え方もできますが、どちらかというと最後の最後に、「どこまで行っても仕事で、最優先は自分の健康と家族。自分がいなくても替えが効く」と割り切って、仕事での障害をプライベートな自分の問題ではなく、あくまで仕事上の問題と割り切って捉えることができるかどうかも大切です。そしてネガティブなことに対して対処はするが、感じ方の鈍感力が強ければ強いほど結果的にはよいのではないかと思います。
日本であまり知られていないプログラムマネジャー
残念ながら日本ではプログラムマネジャーという職種がまだ十分に浸透していないというのが現状です。その理由にはいくつかの要因が考えられます。
職種の認知度の低さ
プログラムマネジャーという職種は、日本のビジネス界ではまだ新しい概念であり、多くの企業や業界では一般的ではありません。そのため、職務の認知度が低く、企業がプログラムマネジャーの重要性を理解していないことが、浸透していない一因となっています。また、実質プログラムマネジャーの仕事をしていますが、明確に職種として認識されていない場合も多いと思います。
伝統的な組織構造
IT業界ではあまりないのですが、日本の企業の多くには、未だに伝統的な組織構造が根強く残っており、部門間の垣根が高いことが一般的です。そのため、プログラムマネジャーが持つ横断的な役割や、複数のプロジェクトや部門を統括する機能が、既存の組織構造に適合しにくいという課題があります。私が前職で所属した日系企業はプログラムマネジャーを導入しても問題はないと思いますが、コンサル時代にクライアントであった日系企業の中には縦割りが強すぎて、組織横断なふるまいをするプログラムマネジャーに権限を与えるのがそもそも困難という場合もありました。
企業文化の違い
欧米の企業文化では、プログラムマネジャーのようなマネジメントポジションにおいて、リーダーシップや意思決定を重視する傾向があります。しかし、日本の企業文化では、コンセンサスを重視し、意思決定が上層部や経営陣に委ねられることが多いため、プログラムマネジャーが持つべき権限が制約されることがあります。私自身現職の外資系企業に入ってまだ慣れていない点です、経営層に提案してもコンサル時代や前職の「伺いを立てる」スタイルが抜けきれていません。一方でプログラムマネジャーはプログラムに対する責任者として、「提案し、推し進める」ことが求められており、企業文化の違いが根底にあると思います。
教育・研修の不足
認知不足と相まって、プログラムマネジャーの役割やスキルを習得するための教育・研修が日本ではまだ十分に整っていないことも、浸透しきれていない理由の一つです。これにより、プログラムマネジャーを目指す人材が十分に育成されず、その重要性が広まらないという悪循環が生じています。
カテゴリ | 内容 |
---|---|
プログラムマネジャーの役割 | 企画・推進・管理 |
複数のプロジェクトの統括 | |
ステークホルダーとの交渉・説得 | |
障害の解決と前進 | |
スキル・能力 | ビジネス戦略と目標設定力 |
ドメイン知識と分析能力 | |
チームビルディングと人材育成 | |
タイムマネジメントと優先順位付け | |
リスクマネジメント | |
根性でやり切る力、そして鈍感力 | |
日本での浸透の課題 | 職務の認知度の低さ |
伝統的な組織構造 | |
企業文化の違い | |
教育・研修の不足 |
これらの要素を総合すると、プログラムマネジャーは非常にやりがいのある職種であり、一般的なビジネススキルやマネジメントスキルを向上させる絶好の機会です。私の周りでは、プロジェクトマネジャーとして経験を積み、またプロダクトマネジャーからプログラムマネジャーに職種転換、もしくは別の職種として会社横断のプログラムに参画することを通してプログラムマネジャーになるパターンが多いです。より複雑かつ大きな領域で会社に影響を及ぼすプログラムをマネジメントして会社を変えていく、そんな大変だけどやりがいのあることに興味のある方はぜひキャリアの選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。